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おれは、サイモン。

岐阜店

おれは、サイモン。
去年の秋ごろ、ここにきた。
ちょっと前まで違う名前で呼ばれていたけど、ここで新しく「サイモン」って名前をもらった。
ここの人間に「サイモンっぽい顔だね」と言われるけど、サイモンっぽい顔っていうのがよく分からない。
人間って、不思議。

おれは、ベーグルやモグと同じ家にいた。
そこにはもっとたくさんの仲間がいて、人間がひとり、一緒に暮らしていた。
だけど、いつの間にか、部屋の中がゴミだらけになって、人間は帰ってこなくなった。

外はとっても暑そうだったけど、窓が開かない家のなかは、もっと暑かった。
水もご飯もなくなって、だんだんと仲間たちが動かなくなった。
少なくなったご飯を食べるため、残り少なくなった仲間たちに、パンチをするしかなかった。
おれが、生きるために。


ある日、見たことがない人間がやってきて、俺たちはどこかへ連れていかれた。
それまではみんな同じ部屋にいたけど、そこでは冷たいケージにひとりずつ入ることになる。
ケージなかは狭いし、下は隙間があって、足が落ちるし落ち着かない。


ご飯はもらえるけど、人間とおれたち猫の間には、柵があって、撫で撫でしてくれる暖かい手はない。
みんなとご飯を取り合う必要はないけど、隣にいるのに、すごく遠いし、いくらおれでも心細い。

おれたちと一緒に暮らしていた人間に、「しょゆうけんほうき」っていうのを頼んだみたいだけど、それにはお金がかかるらしくて、それもしてくれない、って人間が話していた。
どうやら、おれたちは「ちゅうぶらりん」って状態らしい。

そんなある日、新しい人間がおれたちを見に来た。
おやつをちょっとくれて、「待っててね、大丈夫だよ」って言って、帰っていった。
おれは鼻を近づけて、「約束だぞ」って伝えたつもり。


それから数日して、ベーグルやモグたちが先出ていった。
どうやら風邪をひいたらしい。
残された俺は不安だったけど、「待っててね」って言われたから、待ってることにした。
なんとなく、「きっといいところに行けるんじゃないか」っていう希望があった。

おれは、前のお家で、どんな猫よりもたくさん食べていたから、元気だったし最後にケージを出た。
どうやら、おれたちは「ねこのきょうわこく」ってところに行くらしい。

そこでおれは、あたらしく「サイモン」っていう名前をもらった。
一緒にきた、ベーグル・モグ・カーリー・シェダー・グリフィン・オリバーも、みんな新しい名前になった。
みんな、何かよく分からない薬を飲ませられたり、ふわ〜って煙が出るのを鼻に当てられたりしてたから、元気になったし、毎日美味しいご飯をもらえた。

それにここの人間たちは、みんなおれたちを見て、にこにこしていた。
怖がらないように、指1本だけをちょっとずつ近づけて、挨拶してから、少しずつ近くにきた。
そうそう、俺が欲しかったのは、こういうなでなでだ。

他にもたくさん猫がいた。
みんなそれぞれ、いろんなところから来たらしいけど、よく分からなかった。
そしてたまに、たくさんの猫と、しあわせそうな顔をした人間たちが、お見合いみたいなのをして、数日後にその子がいなくなることがあった。
病院かな、って思ったけど、戻ってくることはない。
でも、にこにこした人間たちが、嬉しそうに話しているのを聞くと「ずっとのお家」というのが見つかったらしい。
どこにあるんだろ、おれのずっとのお家。

元気になったおれたちは、この家のいろんな部屋に散り散りになった。
おれと同じ部屋には、ベーグルとモグ、カーリーがいる。
その他大きな猫や小さな猫、毛の色も、長さもバラバラな猫たちがいるけど、おれはいつもみんなに怒ってしまう。

前の家ではそうやって過ごしていなきゃ、生きていけなかった。
みんなにパンチをしたり、シャーを言わないと、ここでも他の猫たちに、ご飯も撫で撫でも取られてしまうかもしれない。

そんなおれを見て、人間は、「サイモンはひとりっこだね」という。
ひとりっこっていうのがよく分からないけど、ずっとのおうちで、おれはひとりっこになれるんだろうか。
本当は俺だっておこりたくないし、みんなと家族や仲間になりたいけど、前のお家で、「家族」は「ライバル」になっちゃった。

今日もおれは美味しいご飯をもらって、みんなに怒りながら、お部屋を見てまわる。
おれがケージから出ると、みんな降りてこないし、目を合わせようとしない。
もうちょっとだけ優しくなれたら、おれに家族ができるんだろうか。

人間に聞いてみると、今日も笑って「サイモンはそのままでいいよ」っていう。
だから、おれはサイモンのままで、あたらしいずっとのおうちをここで探す。
次は、きっと本当に仲良くなれる家族ができるはずなんだ。
そこではご飯も撫で撫でも、おれのひとりじめだ。

おれのあたらしい家族、はやくおれを見つけてくれ。
おれの準備はできている。


サイモンたちの話はこちらから👇

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卒業ねこ
  • 性別男の子
  • 年齢1-3才
  • 在籍店岐阜店
  • 毛色グレー
  • 毛の長さ短毛
  • 人馴れ度ツンデレ

Comment

[雌雄・歳]
3歳・♂

[経緯]
ゴミ屋敷にした飼い主が「自分の家に戻りたくない」と他の家を転々とし、飼っている約20匹の猫には週2-3回帰宅して餌やりをしていました。
夏の暑い日、飼い主が緊急入院したため、栄養失調・熱中症で20匹いた猫たちは半数以上亡くなってしまいました。
残った7匹が保健所に預けられ、ネコリパに依頼が来たので保護することになりました。


[特徴・性格]
顔も体も大きく、食欲旺盛。
ボス級の威厳で、みんなを圧倒しています。
癖になる人はたまらないですよね。

[健康状態]
食欲あり。元気。

ワクチン 済
駆虫 済
去勢ー手術 済

エイズ 陰性
白血病 陰性

首相あさかのつぶやき

殺処分をなくすために。

1.蛇口をしめる

2.受け皿をつくる

3.出口をつくる

4.継続する

 

この4つを常に同時におこなっていかなければなりません。

蛇口をしめる活動は
TNR活動や、地域猫活動。飼い猫の完全室内飼育の徹底と不妊去勢手術の徹底。

受け皿を作る活動は
保護猫カフェや、保護猫シェルター、預かりボランティアを増やすこと。

出口を作る活動は
譲渡会・保護猫カフェで、保護猫と出会える場所をつくりだすこと。

継続する活動は
上記のすべての活動に必要な資金をしっかりと集められる仕組みを作ること

ネコリパは2014年から、10年間この活動を行ってきました。まだまだ道半ば。まだまだやるべきことは死ぬほどある。新しい切り口で、ネコリパしかできないことを、これからもずーっと継続し、成長し続けていく。

立ち止まることを知らないネコリパだからこそ、社会をかえるきっかけになれるように・・・

2024.7.2

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