わたくし、ミーコ。
御年14歳。
最近、こちらの「猫の共和国」にやってきました。
なんだか騒々しいぐらい、たくさんの猫たちがいて、ゆっくりお昼寝もできないけれど、なかなか面白い毎日を過ごしているわ。
わたくし、ここにくる前は、おじいさんと一緒に住んでいたの。
少し前まで、もう1匹、猫がいたんだけど、亡くなってしまったわ。
本当は、わたくしが最期の時まで、おじいさんと一緒に過ごす予定だったけれど、おじいさんが施設に入ってしまったらしいの。
とても元気で優しいおじいさんは、わたくしたち猫しか家族がいませんでした。
でもある時から、物忘れが酷くなってしまってね。
だんだんと体の自由も効かなくなってしまいましたの。
もともと「生活保護」というのをおじいさんは貰っていたので、おじいさんの様子が変わってきたら、職員の方がお家に何度かいらっしゃるようになったわ。
おじいさんの生活をサポートしてくれる職員の方とうかがったけれど、なかなか信用ならなかったわね。
でも、ある時、おじいさんが全く帰ってこなくなっちゃったのよ。
職員さんは優しく、「おじいさんは、病院に入院した」と教えてくれたわ。
何てことでしょう。
わたくし、これから先どうやってご飯を食べて、誰に撫でてもらえばいいのかしら。
途方にくれそうになったけれど、どうやらおじいさんは、その職員さんに入院する前、わたくしのことを頼んでいてくれたらしいわ。
そして、その職員さんが、おじいさんの入院前に、この「猫の共和国」を事前に探しておいてくれたの。
既に話が通っているなんて、仕事の早さにびっくりよね。
「信用ならない、と言っちゃってごめんなさいね」って心の中で謝っておいたわ。
それでもやっぱり、おじいさんと過ごしたこのお家が離れがたくて、捕獲機っていうやつに入るまでに、少しお時間を頂いたわ。
それに捕獲機がちょっと小さかったのよね。
おじいさん、物忘れがひどくなってきたころから、わたくしが鳴けば毎回、ごはんをくれるようになっちゃってね。
別に毎回「ごはんをいただける?」って声をかけてたわけじゃなくて、「ごきげんよう」「今日の気分はいかが?」なんて話してただけなのに、おじいさんはすべて、ごはんの催促だと思ったのね。
まぁ、ありがたく頂いたから、わたくし、このダイナマイトボディになってしまったんですけど。
そして、後日、この猫の共和国にやってきたのよ。
わたくし他の猫と暮らしたことがあるから、猫にはびっくりしないんだけど、こんなにも猫がたくさんいるところだというのは、聞いてなかったわ。
しかも小さい子から、大きい子まで、いろんな子がいるのねえ。
わたくしの自慢のしっぽを触ってくる子とか、わたくしのごはんを狙ってくるような食いしん坊さんもいて、全然飽きないわ。
そうそう、後から聞いたんだけど、私はここに「猫生たすけあい制度」というのを使って入国できたようよ。
おじいさん、生活保護でとても生活が苦しかったけど、「ミーコのために」といって、お金を貯めておいてくれたの。
おじいさんが、わたくしのことを家族だと思ってくれていたのが、とっても嬉しかったわ。
そして、職員さんも猫を飼っているらしくて、わたくしのことを、しっかりと「残された家族」として扱ってくれたのよ。
おじいさんがお金を残しておいてくれたのもあるんだけれど、職員さんも「保健所」という怖いところへの選択肢を外してくれたの。
わたくしが捕獲機に入るまで、何度もお仕事終わりにお家に通って、トイレなどのお掃除をしてくれたわ。
そして、わたくしはいま、ここにいるのよ。
でもわたくし、もう14歳ですから。
ゆっくりゆったり、おじいさんとの暮らしのような静かなお家を希望するわ。
どうやらここは、そういう新しいお家を探すこともできるらしいの。
若い子がいるから、14歳の子はちょっと…っていう方がみえたら、ぜひお会いしたいわ。
人間ってどうしてこうも、年齢に囚われるのかしら。
わたくし、認知症のおじいさんとの暮らし、とっても楽しかったわ。
でも、「認知症」だから楽しかったわけじゃないの。
「おじいさんと」だから、楽しかったのよ。
だからきっと、わたくしの新しい家族になる方も気が付くはずよ。
14歳のミーコだからじゃなくって、ミーコとの暮らしだから楽しい、って。
わたくし、ミーコ。
年を重ねるって素敵なことよ。
だって、生きてるものの特権だもの。
共に生きて、年を重ねる喜びをご一緒できる、新しい家族をここでお待ちしているわ。
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