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おれ、カイ

岐阜店

おれ、カイ。
おれはいま、ネコリパブリックにはいない。
ひとりのスタッフの家で、ゆったりまったり過ごしている。
なんでおれが、ネコリパブリックにいないのか、聞いていってほしい。

おれが保護されたのは、ある施設のそばだった。
何匹かの猫がそこにはいて、施設に通う人間にご飯を貰っていたんだ。
でもある時、捕獲機が仕掛けられて、おれはそこに入った。

もともと保護主さんは、その場所にいた2匹の猫を保護しようと思っていたらしい。
ちょっと小柄で、人慣れしていて、まだまだお外では新人レベルの子たちだ。
だけどその子たちは、捕獲機を怖がってなかなか入らなかったから、その間に、おれたちが入ってしまった。
一緒の現場で捕獲されたのは、ペローナ・カリファ・ハレだ。

おれはその時「疥癬(かいせん)」っていう皮膚の病気を負っていて、体全体がかゆかった。
この「疥癬」からとって、おれは「カイ」っていう名前をつけられた。
それに俺は、りんご猫っていって、猫エイズ陽性。
だけど、そんな名前、おれは知ったこっちゃなかった。

おれは黒猫のボスとして、その地域で生きてきた、生粋の野良猫。
何て名前だろうと、おれがおれであることは変わらないからな。
だからごはんがもらえようと、トイレが片付けられようと、おれの縄張りになったゲージに近づいてくる人間はみんな敵。
ごはんを貰えるのはもちろんありがたいけど、おれはお外での暮らしをその時は満足してたんだ。
だから捕まえられたことに、納得がいっていなかった。

それからおれは、ネコリパブリックのシェルターで過ごした。
だんだんと疥癬はよくなってきたけれど、おれのシャーは収まらない。
検査や手術にきた病院の先生たちにも
「この子はお外の生活が長かったからお外の方が幸せかもしれない。返してあげるのも優しさだと思う。」
とまで言われていた。

おれも最初は外に戻ってもいいかな、って思ってたんだけど、状況がガラっと変わったのは、ネコリパブリックを離れることになったときだ。
移動した先はいまいる、スタッフの家。

たくさん猫がいたシェルターとは違って、この家は猫の数が少ない。
おかげで警戒心がなくなったのと、何よりお気に入りの人間ができたんだ。
その家には、小さい人間が4人いた。
おれはボスだったから、小さい子たちの面倒を見るのは嫌いじゃない。

スタッフが仕事に行って、女の子がおれの名前を最初に優しい声で「カイくん」って呼んだ。
とってもかわいい声だったから、思わず返事をして、すりすりしたんだ。
「そんな名前、知ったこっちゃない」
って言ったけど、それはその時撤回した。
その子たちから呼ばれるたびに、おれは自分の「カイ」という名前が好きになった。
気に入った人間ができたのはもちろんだけど、他のたくさんの猫の前でデレデレするのは、おれのプライドが許さなかった。
だけど小さい子には何度も優しく名前を呼ばれたら、おれだって優しさを返してあげなきゃいけない。

それからのおれは早かった。
すりすりゴロゴロ、手からごはんも食べれるようになったし、何と抱っこもできるようになったんだ!
最近では、人間の横に寄り添って、一緒に寝ることもできる。

この家の1番小さなちびっこは、朝起きると、自分の顔の横に両手をぱぁっと広げて
「おはよう~🤗」
っておれの顔の前で挨拶する。
悪くない目覚めだ。

おれはゲージから出たものの、野良の時の癖が抜けず、トイレの場所を決めることが苦手だ。
それを知ってる1番小さなちびっこは、いつも俺が動くと、俺の後ろをついてくる。
トイレをしないか見張ってるんだ。
最初こそ「何でいつも後ろをついてくるんだ」って思ったけど、最近では「とっても勤勉な舎弟だな」と思ってる。

スタッフがたまに言ってる。
「人慣れしていない子を、保護して、里親募集しようか悩んでる人がいる」って。
おれはその時、こう思う。

保護主さんたちが目指す「人慣れ」って何だろう。

おれは抱っこやなでなでが好きだけど、なかには嫌いな子もいる。
お膝の上に乗ったり、撫でられたりすることも、猫によって好き嫌いがある。
でもそれは、生まれた時からそうしていたか、の違いじゃなくて、もともと持って生まれた好き嫌いだ。

だからスタッフはこう返すんだって。
「猫それぞれの人慣れレベルがあって、人慣れ=膝の上に乗ることじゃない。
その子なりのレベルのなかで、少しずつ人慣れしていきます。
怯えて部屋の隅で固まっていた子が、同じ空間で寛げるようになったのなら、それはもう人慣れです。」
って。

うんうん、わかってるじゃないか。
みんながみんな人慣れしたら、お膝の上で撫でさせてくれると思ったら、大間違いだよ。
だって、おれたち猫だもん。

それにそんなそのままのおれたちを、愛してくれる人を、おれたちは新しいお家に選びたい。

おれたち元野良猫は、すぐに人慣れはしないし、相性もある。
今回は「預かりボランティア」っていうのが足りなくて、スタッフの家にきた。
だけどこの預かりボランティアっていうのが、どこの店舗も足りていない。
おれだって、この家じゃないところで慣れたかと言われたら分からない。
だけど人間や猫の出入りが少ない場所だからこそ、慣れることができたんだと思う。
ここで慣れて、おれもいつかは猫カフェデビューするかもしれない。

こうやって、保護主がいて、ボランティアがいて、家猫訓練をすることで、心の準備ができて新しいお家に行きやすくなるんだ。
これを命のリレーって、ここでは言ってる。

おれ、カイ。
元野良猫だけど、いまは舎弟付きで家猫訓練中。
これから暖かくなると、たくさんの保護依頼がどんどんやってくる。

おれは最初、人馴れもしていなかったし、疥癬っていう病気だったし、猫エイズだった。
でもここのスタッフたちは、決してお外に返すという選択肢を持つことはなかった。
俺は知っている、ここのボス・あさか首相が常々こうやって言っていることを。
「猫1匹1匹の命は平等で、どの猫も幸せになる権利がある。
ご縁のあった命に、責任をもって活動をしている。」


この命のリレーには、必ず守らなきゃいけない約束がある。
それは、はじめたら最後まで責任を持つことだ。
絶対に、最後まで、だ。約束だよ。


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  • 性別男の子
  • 年齢不明
  • 在籍店岐阜店
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  • 毛の長さ短毛
  • 人馴れ度のんびり
  • 人馴れ度デレデレ

Comment

[年齢・性別]
不明・男の子


[経緯]
岐阜県のとある建物の近くでたくさんのノラちゃんがご飯をもらっており、カイくんもその1匹。
保護主さんは良く見かける2匹を保護して暖かいお家に入れてあげたいとのことでしたが、なかなかその子たちは賢く、
捕獲器を警戒して全く入りませんでした。

そこで何日も仕掛けるうちに入る子たちはお目当ての子ではなく、計4匹の猫たちが捕まりました。
ペローナ、ハレ、カリファ、そしてカイ君です。

保護したては疥癬という皮膚病を患っており、カイセンのカイから取り、カイ君と名付けました。
そして生粋の野良君で、人間への恐怖心から攻撃が止まりませんでした。
ご飯を上げようとしても怒りまくりでスタッフもビクビクしながらあげていました。

去勢手術を行った獣医からは、「この子はお外の生活が長かったからお外の方が幸せかもしれない。返してあげるのも優しさだと思う」と言われ、
TNRを決意していました。

そんな中スタッフの一人が立ち上がり、おうちで人馴れトレーニングをすることに。
そしたらあら不思議、たった1週間ほどで触らせてくれるようになり、さらには甘えてくれるようになったのです。

これにはスタッフ一同「なんで?!」と驚きました。

猫は環境の変化やふとしたことがきっかけで180度性格が変わることがあります。今回はそれを常々感じさせられましたね。


[特徴・性格]
甘えん坊でお胸の白いお毛毛の鈴がポイント。
年齢は不詳。もしかしたらおじいちゃんかもしれませんね。

甘えん坊ですが、お粗相癖があるため、どこでもしてもいいよー!という強者の方募集中です。
夜は必ずスタッフの布団の上に来て寝てくれるそうです。

エイズ陽性のキャリア持ちです。

[健康状態]
食欲あり。元気。

ワクチン3種接種 済
駆虫 済
不妊手術 済

エイズ 陽性
白血病 陰性

首相あさかのつぶやき

殺処分をなくすために。

1.蛇口をしめる

2.受け皿をつくる

3.出口をつくる

4.継続する

 

この4つを常に同時におこなっていかなければなりません。

蛇口をしめる活動は
TNR活動や、地域猫活動。飼い猫の完全室内飼育の徹底と不妊去勢手術の徹底。

受け皿を作る活動は
保護猫カフェや、保護猫シェルター、預かりボランティアを増やすこと。

出口を作る活動は
譲渡会・保護猫カフェで、保護猫と出会える場所をつくりだすこと。

継続する活動は
上記のすべての活動に必要な資金をしっかりと集められる仕組みを作ること

ネコリパは2014年から、10年間この活動を行ってきました。まだまだ道半ば。まだまだやるべきことは死ぬほどある。新しい切り口で、ネコリパしかできないことを、これからもずーっと継続し、成長し続けていく。

立ち止まることを知らないネコリパだからこそ、社会をかえるきっかけになれるように・・・

2024.7.2

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